横向きで生きる美学・エクストリーム

今年、ソフィー・フリーデル(Sofie Friedel)に逢った際、すぐに我々は同じ事を志す者同士だと判った。そう、スケートボードを通して平和を育てる同士だという事を。

Michael Brooke

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Teaching in Kabul Afghanistan Photo Joel Shame

今年の春、ソフィーの本が出版されました。内容は、戦争でどんなに壊された国にあっても、スケートボードを通して癒しを得る事が出来るを語っており、是非一人でも多くの人に読んで頂きたい書籍なのです。

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本の中で、彼女の体験したダウンヒルのコミニュティーに関する章があり、これは皆さんとシェアせねば!と思う次第です。The Art of Living sideways / 横向きで生きる美学はスプリンガー出版から絶賛発売中で、アマゾンで購入することが出来ます。

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Vienna underground Photo Nicole Fleck

【抜粋】

スピードは自身の自由を解き放ってくれる。しっかり掴まり、そして楽しむんだ。スピードは全てを可能にする。(Brannon in Borden/ボーデンにて/ブラノン 2001:107)

現在ではワールドチャンピオンシップが行われるチェコスロバキアで2009年に開催されたコザコフ・チャレンジで偶然私はスケートボードのミステリーな世界へと足を踏み入れた。

当時、レーストラックは綺麗に舗装されたばかりで、その全長は3キロ。小さなカーブなどもあるマウンテン・ロードでスケートボーダーは時速80~105キロで走行可能だった。ちょうどこの時、私はトライアル中にこれまでの私自身のスケートボードに対する理解を超える経験をしたのです。

以下にその時の事を記述しました。しかし、この経験を文字にする事は想像以上に難しく、その真意が皆様に伝わるか、自信はありません。芸術作品のように、それぞれ捉え方が違うので、一言では表現するのは難しく、この感覚を知るには、皆さん自身が同じ体験をするのがベストだと思いますが、この文章を通じて何かを伝える事が出来れば幸いです。

夏真っ盛りの中、赤いフルボディー・レザー・スーツにフルフェィスのヘルメットを装備した私は、その暑さよりも、興奮のほうが勝っていた。

様々な地域から集った刺激的なコミュニティ。そう、これから私は初めて、メジャー・ダウンヒル・レースに参加するのだから。

私の隣りのテントには、郵便局員、大工、弁護士、建築家、歯医者、グラフィック・デザイナー、生物学者、倉庫の管理人、マッサージ師、物理学者、無職のお父さんなど、様々な人達が居た。ここでは若かろうが、年をとっていようが関係無い、全ての壁が取り払われる。大事な事はスケートボードに乗ることのみなのだ。

競争心を駆り立てるイベントではあるのですが、競争心よりも。全ての参加者との気持の一体感(ユニティー)を感じる事が出来る。表彰台の何処に立つよりも、自分の腕を上げ、楽しみながら、全ての選手との一体感を大事にしてる印象を強く受ける。

いよいよ私の番だ。

後ろ足が前足と重なるようなスタンス、後ろ足の踵は軽く上げ気味。体重の殆どは前足に。背中は腰から下は曲げ、胸はしっかりと張り、空気抵抗を極力抑える姿勢で勢い良く滑る。

暑い。スピードは乗り、景色も高速で流れ始める。自分の吐く息がサンバイザーのつばの所で溜まってる。

道路を独り占めにして走る爽快感!

速い、速い、速い!まるでドイツの高速列車に乗ってるようだ。

これまでの走行の中で一番速く感じる。(計測では83.5キロだった)

そうこうしてる間に前輪がぐらつき始めた。

スピードが乗れば乗る程、ボード上の動きはゆっくりにしなければいけない。

このスピードの中でボード上で動くのは余りにも危険過ぎる。

激しくワイプアウトするのか、、、、

私は冷静を心がける。

このままジッとしていれば大丈夫、次のコーナーさえ耐えきればなんとかなると自分に言い聞かせてるものの、確実な自信はまったくない。

全身の全ての細胞が興奮してる。体全ての筋肉が硬直し、全身全霊で集中する。

体中からアドレナリンが出てるのが判る。

生きているという全ての感覚が、ピークに研ぎすまされた感覚に自分が包まれている。

運をこれほど願った事は無かったと思う。

腹をくくった瞬間、不思議と前輪のグラつきが収まり始めた。

最後のコーナーをクリア。

私はそのままフィニッシュ・ラインへ滑り込んだ。

これらは全て数秒間の間に起きた事なのに、随分長く感じられた。

実際、この後数日間も私はナチュラル・ハイ状態で、この感覚を楽しむ事が出来た。

心理学者マスロウの歌う、ピークを味わうというのはああいう事なのか。

限界を超えた者達は、自分達は運が良いと思うようになるいう記述の通り、私も限界点が解放され、今迄見えなかった地平線の向こう側が開けたように思えた。

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この記事はConcreteWave June 2015 The Art of Living sideways の抄訳です